天空落とし

一人の夜なので、夕飯を食べに近所の洋食屋さんへ伺った。常連と胸を張るには慎ましい訪問頻度だけれど、店長さんとは一言二言交わすくらいには馴染んできた。そう自負している居場所だ。

今日は先客の二人連れがいて、店長さんとの小気味よいやりとりが続いていた。ごめんと思いながら、三人のやりとりを肴に、注文したボロネーゼを頬張る。

店長曰く、ラーメンは特殊だという。あれだけ店の外に人を並ばせる業態は珍しいそうだ。確かに突然話題になるカフェなどはあれど、業態そのものに行列のイメージが結びついているものは珍しい気がする。 需要が供給を上回るなら、供給を増やすか、価格を上げて需要を落ち着かせればよさそうなものだ。けれどラーメンは、値段を上げると一気に客が離れてしまう感覚がある。「ラーメンなんだから、高くても1200円くらいに収まってくれよ」という、あの感じ。

淡麗なスープなら高価格帯の洒落た路線もありそうなのに、とんこつのような濃厚なラーメンには、なぜかあまり高い値段をつけてほしくない。消費者が商品に抱く「これくらいの値段であってほしい」という強固なイメージも、需要と供給の形を変えるのだなあと、なんとなく理解が深まってにんまりする。

そうこう考えている間に、話題は「ラーメン店の行列を生むボトルネックは、調理なのか仕込みなのか」へと発展していた。私が同じ麺類を食べていることに店長さんが気づき、「変な話してごめん」と謝られた。とてもおいしいおつまみだったので、むしろご褒美である。

ラーメンを連想させてしまったことを謝ってくれた店長さん。今日、パスタの湯切りは天空落としだった。そういうところも含めて、お気に入りのお店です。

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