3年C組

2026-04-13 — day 6
きょうのはなし
上の空の月曜

月曜の朝、圭はプリント配布の段取りを進め、大輝は頭の中の声に気を取られたまま生返事を続けた。昇降口では三人が短く言葉を交わし、それぞれの教室へ散っていった。

昼休みの購買の列で、芽依はどこか上の空だった。七海がそれに軽く気づいただけの、いつもの月曜だった。窓際では翔太と結衣が雑談し、悠は文庫本から一言返しただけで会話の輪には加わらなかった。

放課後、四人は河川敷を並んで帰ったが、小テストの話は続かないまま、橋の手前で別れた。サーブ練習中、上の空の結衣を七海が気にかけたが、結衣ははぐらかし、練習はいつも通り続いた。夜、朝練の連絡から芽依の話に触れかけた大輝を翔太が眠気を理由に切り上げ、糸をほどいた話から蓮の寝不足に触れた美羽の気遣いも間が空いたまま流れた。大輝と芽依はそれぞれ相手宛てのDMを書き、送らずに消した。

08:10登校
大輝
頭の中の声、上の空
悠斗
上履きに履き替える
翔太
昇降口で会釈だけ交わす
鞄を肩にかけ直す
廊下を早足で通る
健太
水筒を鞄に押し込む
プリントの束を数えている
あくび一つ、目をこする
大地
大股で階段を上る
莉子
手鏡をちらと見て仕舞う
芽依
(告白って、なんで急に)
七海
靴箱の前で立ち止まる
美咲
靴を履き替え、会話を切る
さくら
圭の声を聞き流している
陽菜
窓の外を見ながら歩く
結衣
配られたプリントを畳む
愛梨
髪を一つに結び直す
美羽
「またね」と踵を返す
教室(朝) — 大輝・圭・さくら・結衣(見ていた: 悠斗・芽依・愛梨)

始業前の教室。窓際の席で大輝が机に肘をついたまま動かない。

さくら「おはよー!……って大輝、聞いてる?」

大輝「あ、聞いてる聞いてる」

聞いていない。

「木村、悪いんだけど購買のプリント配るの手伝ってくれる?あと三十枚」

さくら「はいはーい、任せて」

圭が配布物の束を数え直す。指先で紙の端をそろえる仕草。

結衣「大輝くん、なんか今日ぼーっとしてる」

大輝「別に。ただちょっと……いや何でもない」

結衣がそれ以上は聞かず、窓の外に目をやる。}

昇降口 — 美咲・翔太・美羽(見ていた: 悠斗)

月曜朝の昇降口。傘立てに濡れた傘が三本並ぶ。下駄箱の扉が開く音が続く。

翔太「渡辺さん、おはよー。今日も眠そうだね」

美咲「……普通。いつも通り」

美咲は上履きの踵を指で押し込みながら答える。目は合わせない。

翔太「斎藤さんもおはよう。手芸部、朝練とかあるの」

美羽「……朝は、ないです」

美羽は靴箱の奥を見たまま答え、上履きに履き替える。

翔太「月曜日って靴紐結ぶの地味にめんどいよな」

美咲「紐じゃなくてマジックテープでしょ、翔太の」

翔太は自分の靴を見下ろし、黙る。三人はそれぞれの方向へ廊下を歩き出す。

12:35昼休み
大輝
頭の声に気を取られ、箸が止まる
悠斗
購買列、パンを選び直す
翔太
窓際で結衣と笑い合う
文庫本から目を上げない
弁当を黙々と食べている
健太
牛乳パックを潰して遊ぶ
配布プリントの余りを数える
スマホの画面を眺めている
大地
友人と大声で笑っている
莉子
窓の外をぼんやり見ている
芽依
購買の列、上の空で立ち尽くす
七海
芽依の様子を横目で窺う
美咲
友達とお弁当を広げている
さくら
机でノートを読み返す
陽菜
窓際でぼんやり外を見る
結衣
翔太と窓際で雑談中
愛梨
友達と大きく笑っている
美羽
購買の列に並んでいる
教室・購買 — 芽依・悠斗・七海・美羽(見ていた: 翔太・愛梨)

購買の列。芽依、ノートを小脇に挟んだまま列の順番を一つ飛ばす。

七海「芽依、そこ田中くんの後ろだよ」

芽依「あ、ごめん」

列に戻る。焼きそばパンの棚を見て、手を止める。

美羽「…メロンパン、売り切れてた」

七海「早く来ないとね、月曜は特に」

悠斗、会計を済ませて先に廊下側へ寄る。芽依のほうを一瞬見て、また窓の外に目を戻す。

芽依「(小声で)告っちゃいなよ、って…なんでそんなの浮かぶんだろ」

七海「何か言った?」

芽依「ううん、独り言」

教室の窓際 — 翔太・結衣・悠(見ていた: 愛梨)

昼休み、窓際の机に陽が当たっている。山田悠が文庫本を開いて座り、清水結衣が隣の机に鞄を置く。

翔太「結衣、今日部活休み?なんか荷物少なくね」

結衣「あ、うん。月曜は自主練だから道具持ってこなくていいの」

翔太が窓枠に肘をつく。悠はページをめくる手を止めない。

翔太「山田もなんか読んでんな。それ面白いの」

「……普通」

翔太が聞き返す間もなく、結衣が窓の外を指して話しかける。

結衣「あ、雲、なんか変な形。翔太くん見て」

翔太「どこ。……あー、たしかに変」

悠は顔を上げないまま、ページの端を指でなぞる。

16:00放課後
大輝
パスがまた逸れた
悠斗
イヤホンで帰り道
翔太
自転車の鍵を探してる
橋の手前で足を止めた
ストップウォッチ片手に
健太
鞄を肩にかけ直す
議事録を確認してる
河川敷の草を蹴りながら
大地
如雨露で水をやってる
莉子
返却本を棚に戻す
芽依
楽譜を目で追えていない
七海
結衣の様子を横目で
美咲
橋で手を振って別れた
さくら
台本を繰り返し読む
陽菜
うさぎ小屋の掃除中
結衣
サーブを何度も打ち直す
愛梨
鼻歌まじりに帰る
美羽
自転車を押して歩く
帰り道(川沿い) — 悠・蓮・美咲・美羽

放課後、河川敷の道。土手に菜の花がまばらに散っている。悠と蓮が少し間を空けて歩き、美咲と美羽が後ろから合流する形になった。

「眠い」

誰も反応しない。蓮は欄干に手をかけて、あくびをする。

美羽「今日の数学、小テストあったよね」

「あった」

声が小さく、美羽が「え?」と聞き返す。悠はもう一度は言わず、川面に目を戻す。

美咲「小テスト、何点だった」

誰も答えない。自転車が横を通り過ぎ、ベルが鳴る。

「渡辺さんち、どっち」

美咲「橋渡ってこっち」

バレー部 — 七海・結衣

体育館。サーブ練習の列。ボールの弾む音が等間隔に続く

七海「清水、順番。ほら」

結衣、一拍遅れてトスを見上げる。ボールが足元に落ちる

結衣「あ、ごめん」

結衣、拾い直して列の後ろに並び直す

七海「大丈夫? さっきから上の空じゃない」

結衣「平気。ちょっと寝不足で」

七海、結衣の顔を数秒見てから、それ以上は聞かずにホイッスルを鳴らす

七海「次、清水の番。今度はちゃんと見てね」

結衣、頷いてサーブの構えに入る。ボールは今度もネットにかかる

21:30
大輝
またDMを開いて、閉じた
悠斗
ベッドで漫画、栞は挟まず
翔太
「眠い」と言って、布団に潜った
河川敷の続き、頭の中で反芻
イヤホンで音楽、歌詞は聞いてない
健太
筋トレの数を、声に出して数える
明日のプリント、机に重ねた
美羽からのDM、既読のまま
大地
冷蔵庫を覗いて、また閉めた
莉子
参考書のページ、同じところで止まる
芽依
画面を伏せて、天井を見ている
七海
結衣の既読、まだつかない
美咲
小テストの範囲、もう一度確認
さくら
日記帳を開いて、一行も書けず
陽菜
毛布にくるまって、動画を流す
結衣
サーブの感覚を、指でなぞる
愛梨
爪の色を眺めて、また塗り直す
美羽
蓮への返信、まだ考え中
DM — 大輝・翔太

大輝、既読をつけたまま10分黙ってから打ち始める

大輝「明日の朝練、走り込み増えるってマジ?」

翔太「マジ。顧問が急にキレた。誰かサボったろ」

大輝「俺じゃねえよ」

既読がついたまま返信が止まる。大輝、打っては消すを繰り返す

大輝「なあ、芽依のことなんだけど」

翔太「え、なんの話」

翔太「眠くなってきたわ、また明日な」

DM — 蓮・美羽

未読が1件つき、既読になるまで四十二分かかる。

美羽「おはよう。昨日の刺繍の続き、糸の色間違えてて全部ほどいた」

「それは事故」

美羽「うん。佐々木くんまだ起きてる時間帯だった?」

「起きてるというか寝てない」

美羽、スタンプを選びかけてやめる。文字を打ち直す。

美羽「体調崩さないでね」

蓮の既読がついたまま、しばらく返信が来ない。

00:40深夜
大輝
芽依へのDM、下書きのまま
悠斗
(眠っている)
翔太
「もう寝るわ」と通話切った
既読つけずに天井を見る
(眠っている)
健太
(眠っている)
(眠っている)
美羽への返信、まだ考え中
大地
(眠っている)
莉子
(眠っている)
芽依
既読も返信もつかない画面
七海
(眠っている)
美咲
ノートを閉じて灯りを消す
さくら
(眠っている)
陽菜
(眠っている)
結衣
(眠っている)
愛梨
(眠っている)
美羽
(眠っている)

夜の机の中

大輝 → 莉子 (全て削除)
「莉子、今何してる?」
用件もないのに送る意味がわからず、指が止まって消す
「あのさ、前から言いたいことがあって」
続きが書けない。何が言いたいことなのか自分で書くと急に恥ずかしくなる
「莉子のことが好きです。付き合ってください。」
文字にした瞬間、練習で書いた台本みたいに見えて全消し
「今日の部活きつかったー笑」
本題から逃げただけの内容だと自分でもわかっていて、送る前にやめる

送信ボタンの上で指が止まったまま、画面が暗くなるのを待った。

芽依 → 大輝 (全て削除)
「大輝、今日元気なかったけど大丈夫?」
心配してるのがバレすぎる。妹枠のままただの世話焼きに見える
「聞きたいことがあるんだけど、今度でいいから話せる?」
「今度」で逃げてる自分に気づいて指が止まった
「大輝のこと、ずっと考えてる」
打った瞬間、頭の中の声が言わせてるだけな気がしてきた
「ねえ」
一文字も続かず、結局バックスペース

送信済みは0件、頭の中だけが騒がしい。

日記

「莉子、告っちゃいなよ、と朝からずっと誰かの声。圭のプリントの話に「うん」しか返せなかった。芽依のこと翔太に振ったら、話をそらされて終わった。」
— 大輝の日記
「大輝に告白しろ、って声が消えない。危うく口に出すところだった。購買の列でぼうっとしてたら、七海に少しだけ気づかれた。」
— 芽依の日記
「月曜の朝、プリントの配り方を考えていたら、大輝の返事がずっと上の空だった。」
— 圭の日記
「月曜の教室、圭がプリントの段取りをしていた。大輝の返事が心ここにあらずだった。」
— さくらの日記
「窓際で翔太と話していたら、悠は文庫本から一言返しただけだった。放課後のサーブ練習中もどこか上の空で、七海に気づかれたけどごまかした。」
— 結衣の日記
「月曜の昇降口、三人で少し話してすぐ別れた。放課後は河川敷を四人で帰ったけど、小テストの話は続かなくて、橋の手前で解散。」
— 美咲の日記
「昇降口で少し話して教室へ。窓際で結衣と雑談してたら悠は一言だけ。大輝に芽依の話を振られて、逃げるように切り上げた。」
— 翔太の日記
「昇降口で三人、少し話して別れた。購買の列で芽依がぼんやりしてて、七海が気づいてた。放課後は四人で河川敷、小テストの話は続かなかった。」
— 美羽の日記
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