きょうのはなし
上の空の月曜
月曜の朝、圭はプリント配布の段取りを進め、大輝は頭の中の声に気を取られたまま生返事を続けた。昇降口では三人が短く言葉を交わし、それぞれの教室へ散っていった。
昼休みの購買の列で、芽依はどこか上の空だった。七海がそれに軽く気づいただけの、いつもの月曜だった。窓際では翔太と結衣が雑談し、悠は文庫本から一言返しただけで会話の輪には加わらなかった。
放課後、四人は河川敷を並んで帰ったが、小テストの話は続かないまま、橋の手前で別れた。サーブ練習中、上の空の結衣を七海が気にかけたが、結衣ははぐらかし、練習はいつも通り続いた。夜、朝練の連絡から芽依の話に触れかけた大輝を翔太が眠気を理由に切り上げ、糸をほどいた話から蓮の寝不足に触れた美羽の気遣いも間が空いたまま流れた。大輝と芽依はそれぞれ相手宛てのDMを書き、送らずに消した。
08:10登校
- 圭がプリント配布の算段、大輝は上の空で生返事。
- 昇降口で三人が言葉短く交わし解散。
教室(朝) — 大輝・圭・さくら・結衣(見ていた: 悠斗・芽依・愛梨)
始業前の教室。窓際の席で大輝が机に肘をついたまま動かない。
さくら「おはよー!……って大輝、聞いてる?」
大輝「あ、聞いてる聞いてる」
聞いていない。
圭「木村、悪いんだけど購買のプリント配るの手伝ってくれる?あと三十枚」
さくら「はいはーい、任せて」
圭が配布物の束を数え直す。指先で紙の端をそろえる仕草。
結衣「大輝くん、なんか今日ぼーっとしてる」
大輝「別に。ただちょっと……いや何でもない」
結衣がそれ以上は聞かず、窓の外に目をやる。}
昇降口 — 美咲・翔太・美羽(見ていた: 悠斗)
月曜朝の昇降口。傘立てに濡れた傘が三本並ぶ。下駄箱の扉が開く音が続く。
翔太「渡辺さん、おはよー。今日も眠そうだね」
美咲「……普通。いつも通り」
美咲は上履きの踵を指で押し込みながら答える。目は合わせない。
翔太「斎藤さんもおはよう。手芸部、朝練とかあるの」
美羽「……朝は、ないです」
美羽は靴箱の奥を見たまま答え、上履きに履き替える。
翔太「月曜日って靴紐結ぶの地味にめんどいよな」
美咲「紐じゃなくてマジックテープでしょ、翔太の」
翔太は自分の靴を見下ろし、黙る。三人はそれぞれの方向へ廊下を歩き出す。
12:35昼休み
- 購買の列で芽依が上の空、七海が軽く気づく。
- 窓際で翔太と結衣が雑談、悠は文庫本から一言のみ。
教室・購買 — 芽依・悠斗・七海・美羽(見ていた: 翔太・愛梨)
購買の列。芽依、ノートを小脇に挟んだまま列の順番を一つ飛ばす。
七海「芽依、そこ田中くんの後ろだよ」
芽依「あ、ごめん」
列に戻る。焼きそばパンの棚を見て、手を止める。
美羽「…メロンパン、売り切れてた」
七海「早く来ないとね、月曜は特に」
悠斗、会計を済ませて先に廊下側へ寄る。芽依のほうを一瞬見て、また窓の外に目を戻す。
芽依「(小声で)告っちゃいなよ、って…なんでそんなの浮かぶんだろ」
七海「何か言った?」
芽依「ううん、独り言」
教室の窓際 — 翔太・結衣・悠(見ていた: 愛梨)
昼休み、窓際の机に陽が当たっている。山田悠が文庫本を開いて座り、清水結衣が隣の机に鞄を置く。
翔太「結衣、今日部活休み?なんか荷物少なくね」
結衣「あ、うん。月曜は自主練だから道具持ってこなくていいの」
翔太が窓枠に肘をつく。悠はページをめくる手を止めない。
翔太「山田もなんか読んでんな。それ面白いの」
悠「……普通」
翔太が聞き返す間もなく、結衣が窓の外を指して話しかける。
結衣「あ、雲、なんか変な形。翔太くん見て」
翔太「どこ。……あー、たしかに変」
悠は顔を上げないまま、ページの端を指でなぞる。
大輝 → 莉子 (全て削除)
「莉子、今何してる?」
用件もないのに送る意味がわからず、指が止まって消す
「あのさ、前から言いたいことがあって」
続きが書けない。何が言いたいことなのか自分で書くと急に恥ずかしくなる
「莉子のことが好きです。付き合ってください。」
文字にした瞬間、練習で書いた台本みたいに見えて全消し
「今日の部活きつかったー笑」
本題から逃げただけの内容だと自分でもわかっていて、送る前にやめる
送信ボタンの上で指が止まったまま、画面が暗くなるのを待った。