きょうのはなし
噛み合わない土曜
朝の教室、大地が頭を離れない月の話をする。莉子は寝不足のまま、その話を軽く受け流した。昇降口では陸とさくらが挨拶を交わし、声の大きさのことに少し触れただけで別れた。
購買前での翔太と芽依の立ち話は、互いに上の空のまま終わる。窓際では圭が日誌の数を数え、さくらが手伝いを申し出た。その隣で悠が何かをつぶやいたが、聞き返されて、そのまま消えた。
下校時、北坂で球技大会の組み合わせの話が出る。さくらの大きな声と、上の空の莉子とが絡み合っただけで、坂は下りきってしまった。夜、莉子の何気ない話題に芽依は言葉少なに応じ、核心には触れないまま会話は途切れた。今夜も、書かれて消えたDMがいくつかあった。
12:35昼休み
- 購買での翔太と芽依、どちらも上の空で立ち話が終わった。
- 窓際で圭が日誌回収、さくらが手伝いを申し出るも悠のつぶやきは立ち消え。
教室・購買 — 翔太・芽依(見ていた: 悠斗・愛梨)
購買の列。翔太が焼きそばパンを二個抱えて芽依の後ろに並ぶ
翔太「高橋、今日も部活?水曜って基礎合奏だっけ」
芽依「うん。基礎合奏」
芽依は財布を開けたまま列の進みを見ていない
翔太「元気ないな。パン、あと一個しかないやつ譲ろうか」
芽依「いい。お腹すいてない」
翔太が肩をすくめてレジに進む。芽依は答えずカレーパンを一つだけ取る
翔太「じゃあまた教室で」
芽依は小さく頷いただけで、翔太が離れてから初めて財布を閉じる
教室の窓際 — 圭・さくら・悠(見ていた: 悠斗・愛梨)
窓際の机に、未回収の学級日誌が数冊積まれている。圭がそれを数え直している。
圭「日誌、まだ二列分回収できてない」
廊下から木村さくらが大声で入ってくる。声量はいつも通りに戻っている。
さくら「圭ー、おはよ。また日誌係やってるの?」
圭、プリントから顔を上げず頷く。口の端だけわずかに緩む。
さくら「手伝おうか。声出すの得意だし、名前呼んで回収すれば早いよ」
山田悠が窓際で外を見たまま、小さく口を開く。
悠「昨日、教室でミサキの声、した気がする」
さくら「え、何?」
悠、首を横に振って窓の外に視線を戻す。さくらはもう日誌の束に手を伸ばしている。
16:00放課後
- 下校中、球技大会の組み合わせ雑談。さくらの大声と莉子の上の空が絡んだだけで坂を下りた。
帰り道(北坂) — 翔太・莉子・さくら
北坂の下り、三人の影が斜めに伸びる。さくらの鞄の缶バッジが歩くたびに鳴る
さくら「今日の球技大会の组み合わせ表、見た? うちのクラス初戦から陸上部と当たるんだけど」
翔太「うわ、それ詰んでない? 俺、体育の出席点で稼ぐタイプなんだけど」
莉子は少し遅れて歩き、電柱の貼り紙を読んでいる。反応が遅れる
莉子「……え、なんの話でしたっけ」
さくら「莉子、話聞いてなさすぎ! ここ坂道、息切れとかしてないよね?」
声が響いて、通りかかった自転車の主婦が一瞬振り返る
翔太「いや普通に聞こえてるから、木村の声が坂の下まで届いてるだけ」
さくらは口を尖らせるが、すぐに笑いに変える。莉子は貼り紙から目を離さないまま歩調だけ合わせる
莉子「貼り紙、迷い猫のやつでした。もう見つかったって上から紙貼ってある」
大輝 → 莉子 (全て削除)
「莉子、ちょっと話したいことあるんだけど、今度時間あるとき」
「話したいこと」で察されると思うと指が止まる。全部消す
「昼休み誰かと一緒だったよな。別によくね、とかじゃなくて」
聞きたいだけなのに問い詰めてる文になってて自分で引く
「部活疲れたわー それだけ」
用もないのに送る意味がわからず、送信前に消す
文字にすると全部違う意味になる気がして、結局スマホを伏せた。