きょうのはなし
言葉、二度目の沈黙
水曜の朝は宿題の話に流れ、誰も本題には触れなかった。昇降口で出た小テストの話は翔太が笑いで逸らし、健太の疑念は解けないまま予鈴で消えた。昼休みは購買の列に四人が並び、パンを買って教室へ戻っただけだった。
窓際では七海と美羽が手芸部と飼育委員会の噂を話したが、どちらも深まらずに終わる。放課後は四人で河川敷をだらだらと歩き、悠の言葉はこの日も二度目で流れて消えた。美羽は用事を理由に先に離れ、部活では七海と結衣がネットを張りながら新入生の話を短く交わした。
夜、七海は部活を休みがちな芽依を気にかけ、飼育委員会の謎の人物について尋ねてみたが、話はそれ以上進まなかった。大輝と莉子、芽依と大輝のあいだでは、今夜も画面に書いては消す時間が流れていたらしい。
08:10登校
- 宿題の話題で雑談が続き、本題には誰も触れず。
- 昇降口、小テストの件を翔太が笑って流し、健太の疑念は解消せず予鈴。
教室(朝) — 愛梨・美羽・芽依・大輝(見ていた: 悠斗)
始業10分前。窓際の机に鞄を置く音、廊下側の私語。芽依、机に頬杖をついている。
愛梨「芽依、今日目ぇ死んでない?」
芽依「ちょっと寝坊しただけ」
芽依、ノートを開いて視線を落とす。ページはめくらない。
大輝「おーい、昨日の宿題やった奴ー」
誰も返事をしない。大輝、頭をかいてもう一度同じ方を見る。
美羽「…宿題、あったんだ」
大輝「え、マジで言ってる?」
愛梨、芽依の横顔を一瞬見てから、大輝の方に向き直って笑う。
愛梨「美羽また白紙かー、後で見せてもらいな大輝」
昇降口 — 悠斗・健太・翔太(見ていた: 愛梨)
昇降口。上履きに履き替える列。健太が欠伸をこらえながら靴箱を開ける。
健太「小林、昨日の小テスト何点だった」
翔太「え、忘れた。20点くらい?」
健太、靴紐を結ぶ手を止め、翔太を一瞬見る。
健太「ノー勉で20点はさすがに謙遜だろ」
翔太「謙遜って便利な言葉だな。使お」
悠斗、少し離れた靴箱の前で靴を履き替えながら二人を見ている。何も言わない。
翔太「悠斗も聞いてた?ひどくない、健太の疑いの目」
悠斗、肩をすくめるだけで答えない。予鈴のチャイムが鳴り、三人それぞれ廊下へ向かう。
12:35昼休み
- 購買の列で四人が他愛ない会話、パンを買って教室へ。
- 窓際で七海と美羽が手芸部・飼育委員会の噂話。どちらも深まらず予鈴。
教室・購買 — 愛梨・結衣・健太・莉子(見ていた: 大輝・悠斗)
購買前、昼休みの列。焼きそばパンの棚はすでに半分空。
健太「今日も残ってんのそれだけかよ」
莉子、文庫本を片手に持ったまま列に並ぶ。ページの角が折れている。
愛梨「莉子、歩きながら読むのやめなって、また柱にぶつかるよ」
莉子「ぶつかったの一回だけです」
結衣、少し遅れて列の最後尾につく。三人の背中を見てから声をかける。
結衣「何買うか決めた?私まだ迷ってて」
愛梨「メロンパンでいいっしょ、はい決定」
健太、購買のおばちゃんに焼きそばパンを渡され、財布の小銭を数える。
健太「塾の弁当より安いんだよな、これ」
教室の窓際 — 七海・美羽(見ていた: 悠斗・翔太・愛梨)
昼休み、教室の窓際。七海が机に頬杖をつき、外の部活棟を眺めている。
七海「美羽、今日も窓際?」
美羽「……日当たりがいいから」
美羽はノートの端に何かの図案を描きかけて、七海の視線に気づき手で隠す。
七海「手芸部、新入生入った?」
美羽「二人。まだ道具の名前も覚えてないと思う」
七海が伸びをして、窓枠に肘をつく。
七海「うちも一年入ったけど、レシーブより先に体力測定で死にかけてた」
美羽が小さく笑うが、すぐ視線をノートに戻す。
七海「……そういえば飼育委員会の『部屋番号の人』って知ってる?」
美羽「知らない。誰それ」
予鈴が鳴り、七海が机を離れる。美羽はノートを閉じ、続きを描かないまま鞄にしまう。